【日本1—4ブラジル】 ピッチに座り込んだ川口の目から、涙がこぼれ落ちた。目を疑ったシーンは後半37分だった。4点目を献上後、96年アトランタ五輪でも戦ったGKジダがピッチを去り、控えGKのロジェリオ・セニと交代した。
「親善試合ならまだしも、W杯でGKが代わるとは」。屈辱的な選手交代で、川口の闘志は完全に打ちのめされた。
三浦知(横浜FC)を抜き、国際Aマッチ通算出場単独2位となる92試合目となったブラジル戦は、自己ワーストタイの4失点を喫した。「試合に勝てないのは精神的な問題。取られたら取り返し、1点奪ったら畳み掛ける。試合である以上、最後まであきらめてはいけない」。激しい声でチームメートを鼓舞し、ブラジルを破ったアトランタ五輪の“マイアミの奇跡”の再現を狙ったが、結果は惨敗に終わった。
ただ、前半ロスタイムに同点にされるまでは好セーブを連発したのは確か。試合後のロナウドも「GKが非常によく守っていた」と感想を漏らした。また、イングランド・プレミアリーグでの評価は高く、BBCの解説を務めたマンチェスターCのピアース監督は「前半の3本のスーパーセーブは世界レベル」。ITVではチャールトンのダウィー監督が「結果は4失点だが、彼は日本のチームで一番輝いていた」と称賛した。
4年後は34歳の大ベテランとなるが、南アフリカで4度目のW杯に挑む気持ちは強い。日本の守護神は、このままでは終われない。