道頓堀のグリコのネオンは日没30分前から深夜0時まで点灯する。高さ20メートル、幅約11メートルに大阪城、海遊館、京セラドーム大阪、通天閣が描かれ、空は朝焼けから青空、夕焼け、星空へと変化を繰り返す。江崎グリコ(大阪市)によると、ランナーが大阪の街を1日かけて走っているように表現したそうだ。
ビクターエンタテインメントは03年に発売したCD「大阪ソウルバラード」のジャケットにこのネオンを起用。担当者は「老若男女に共通する大阪の象徴」とみた。ミナミで育った川嶋みほ子・関西社会経済研究所文化アドバイザーは「原風景」という。「何やほっとします」
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大阪市の「都市景観資源」にも登録されている。景観的に優れ、地域を特徴づける重要な建造物や樹木などが対象。大阪城天守閣や市中央公会堂、淀屋橋、通天閣など22件ある。
ランナーが両手を挙げてゴールインするネオンは1935年の登場以来、戦争中、戦後の復興、経済発展、バブル崩壊、今日の経済不況……を駆け、「常に元気なその姿は、大阪の人々に明日への希望を与えている」と評された。同様の登録は、他自治体にもあるそうだが「看板を登録したのはうちぐらいではないでしょうか」と市の担当者。都市の看板に詳しい船越幹央・大阪歴史博物館学芸員は「名所旧跡に乏しい大阪では、繁華街の派手な看板は重要な観光資源。中でもグリコは別格」と話す。
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江崎グリコによると、初代のネオン塔は高さ33メートルでランナーとグリコの文字が6色に変化。戦時中は鉄材供出で撤去し、55年に再建した2代目は、下部の特設ステージで人形劇などをした。63年の3代目は噴水式。72年の4代目で躍動感あるランナーが登場。98年から今の5代目だ。
ランナーの体格にも変化がある。ネオンの初代は少々胴長。大阪で行われた極東選手権大会(23年)で活躍したフィリピンのカタロン、日本初出場のストックホルム五輪(12年)代表、金栗四三ら一流の陸上選手を参考にしたらしい。その後、足が長くなり、顔や手足のしわも減ってあかぬけた感じになり、モリモリ元気になっていく。
ネオンのあるビルには、消防署の出張所や交番が入る。江崎グリコはビルを区分所有し、ネオン真下の土地も持っている。維持費はメンテナンス代と月約16万円の電気代だけだが、経済効果は計り知れないという。
ちなみに、おなじみ「1粒300メートル」の文字は、4代目までついていた。1粒15.4キロカロリー。ざっと、大人が300メートルジョギングした時の消費カロリーだそうだ。(高橋真紀子)
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